Fラン大学からの猛勉強 —— 倍率80倍を突破した男の慢心と、学歴という見えない壁
スポーツの成績を使って入学した、いわゆる「Fランク大学」。
入学直後の新入生歓迎コンパで、自分は思いがけない体験をする。
全国屈指の強豪校で激しい揉まれ方をしてきた自分のサッカー経験を話すと、
周りの同級生たちが一斉に「うわ、マジで!?すごすぎるだろ!」と目を丸くして感心したのだ。
その瞬間、かつて消え失せたはずの
「自分は特別な存在なんだ」という根拠のない自信が、再び芽生えてしまった。
周囲の同級生たちを見渡すと、
親に言われるがままなんとなく学校生活を送り、
なんとなく受験をし、なんとなくこの大学に入ってきた奴ばかりに見えた。
「なんてありきたりで退屈な人生を送ってきた連中なんだろう」と、
心の中で彼らをどこか見下していた。
全国のトップレベルで揉まれ、泥をすすってきた自分とは住む世界が違うのだと、
本気で思っていたのだ。
だが、その愚かなプライドは一瞬で砕け散ることになる。
新入生全員が受ける最初の学力テスト。
自分は中学生レベルの基本的な英語や数学すら、全く解けなかった。
自分が「ありきたりな人生」とバカにしていた同級生たちが
当たり前のように問題を解いていく横で、
自分だけが白紙の答案を前に冷や汗を流していた。
高校まで全ての時間とエネルギーをスポーツに全振りしてきたツケは、
容赦なく回ってきた。
テスト結果を見た周囲の学生たちからクスクスと笑われた。
さらに、教職課程の最初のセミナーで担当教授から遠回しに言われた。
「君の学力では、教員採用試験どころか単位取得すら厳しい」というアドバイス。
頭をガツンと殴られたような衝撃だった。
これまで自分を支えていた「全国レベルで揉まれた特別な経歴」など、
「学力」という社会の新たな物差し(基準)の前では一文の得にもならなかったのだ。
「特別な自分」が、自分がバカにしていた同級生たちよりも遥かに劣っているという残酷な現実。
スポーツしかやってこなかった自分が、社会から初めて「無能」と烙印を押された瞬間だった。
悔しさがこみ上げた。
そしてここから、自分の怒涛の反撃が始まる。
サッカーで培った狂気的な泥臭さを、すべて勉強へとシフトした。
図書館に籠もり、専攻科目経済学の専門書を貪り読み、
教職課程の膨大な課題を片っ端から潰した。
大学2年時には学内で最も厳しいことで有名だったゼミの選考を執念で突破。
3年時には共同論文で優秀賞を獲得した。
しかし、就職活動の時期が近づくと、再び巨大な壁が立ちふさがった。
「学歴フィルター」という、目に見えない社会の壁だ。
当時はリーマンショックの直後。
真面目に就活に取り組んでいる先輩たちが次々と面接で落とされ、
卒業後にブラック企業に使い潰されていく惨状を耳にして驚愕した。
「このままでは、また淘汰される」——
強烈な恐怖に背中を押され、死に物狂いで就活対策を行った。
結果、倍率80倍を超える東証一部上場の某大手企業から、
奇跡的に内定を勝ち取った。
「Fランから大手へ」という劇的な逆転劇に、
自分は再び完全に調子に乗った。
「俺はやればできる」
「スポーツも勉強も就活も、やればどうにかなる」
またしても膨らんだこの増長と慢心こそが、
社会人になってからの自分にどれほど大きなツケを払わせることになるか——
当時のアホな自分は、知る由もなかった。



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